富永 文雄
2002年 獣医師免許取得
インタビュー時期:2025年2月
(イ)試験勉強の時の思い出を聞かせてください。
大学6年生になって、11月初めに学祭があって・・・軽音楽系の部活動に所属していたので、学祭でのバンド演奏など大いに楽しみましたが、その頃ぐらいからでしょうか、本格的に「やばい、国試勉強やらなきゃ」という感じになったと記憶しています。
獣医師国家試験の試験対策としては、獣医学科のある各大学でそれぞれ国家試験対策問題集や資料集を作るのですが、私は獣医薬理学研究室に所属していたので、獣医薬理学の分野の問題を研究室のみんなで分担して作りました。20年以上前の話で、慣れないパソコンで問題を作ったのは大変でしたが楽しくもありました。その、1冊あたり約800ページ×2冊組みの問題集(なぜか今でも持っています笑)を解きつつ、その問題に関わる知識を資料や教科書で深め、拡げていくという感じ・・・わざわざ言うまでもないぐらいオーソドックスなやり方ですね(笑)・・・で国家試験の勉強をしていました。
仲の良い友達7~8人ぐらいでグループを組んで、「勉強会」もやりました。早朝だったり夕方だったり、空き教室を確保してグループのみんなで集まって。仲が良かったはずのアイツがいつの間にか他のグループに行ってたりして、世の中色々あるなって切なくなったりして(笑)。問題集の中のそれぞれの問題について、グループ内で予習して解説する担当をそれぞれ決めて、お互いにみんなで教え合ったりしました。これまた大変でしたが楽しくもありました。
年末近くからは起きている間はひたすらずっと勉強していたと思います。やるべきことが多すぎて、頭が爆発しそうでした(笑)。
年明けに学内で卒業試験があり、国家試験の前哨戦のような感じだったのですが、思っていたより全然出来なくて(笑)、いよいよ「やばい」っていう感じになりました。
卒業試験の結果は、点数はもちろん順位も出るのですが、1学年100人ぐらいの中で、確か19番目だったと記憶しています。微妙な順位ですね、恥ずかしいですが(笑)。
私が所属していた薬理学研究室では、1番とか2番とか成績が良い人が多いのが伝統のようでしたので、普段とてもとてもお優しくて、温厚が白衣をまとってらっしゃるようなお人柄の薬理学教授が「もっと良い成績取れ!」って、言ってたのを覚えています。そんなこと言われたってねー、しょうがないじゃんねーって思いました(笑)。
卒業試験の後は、国家試験本番に向けて、あとはひたすらひたすらひたすら勉強していました。
問題集を5回以上は繰り返しましたが、勉強をやればやるほど、少し前にやった他の部分の記憶がこぼれ落ちるような感覚って言うんですか(笑)、これもやらなきゃあれも出来なきゃと、湧き出るように課題が山積していく感覚に陥り・・・試験間近なのに、焦るばかりで、やりきったという自信はほとんどありませんでした。


東京の早稲田大学が獣医師国家試験の試験会場でした。
私の大学の学生たちは、前日に近くの「リーガロイヤルホテル」という素敵なところにみんなで泊まりました。
大学の先輩の中には、試験前日にみんなで酒盛り(!!)をして国試合格を果たしたという猛者がいるということでしたが、私は非常に心配性なので、酒盛りなんてことは当然出来るはずもなく・・・姉に車を借り、車に問題集と資料など全て(並べると1メートル近くになるんじゃないかってぐらいの量)を積み入れ、ホテルの部屋に運び込んで勉強しようとしてました。「そんなにたくさん持って来たって、勉強できるわけないじゃん」と友人達から大いに失笑をかいましたが、周りのそんな言葉を気にしている余裕はありませんでした(大笑い)。もし試験直前に確認したい部分があるのに、その資料を持って来ていないという後悔をしたくなかったのです。
リーガロイヤルホテル、これがまぁ素敵なホテルだこと!・・・でしたが、酒盛りはおろか、お部屋の素敵さに喜んでいる余裕すら微塵もありませんでした。
獣医師国家試験は2日間にわたって行われました。試験前日はほとんど眠れなかったです(笑)、心配性なので。
試験1日目のことはもはや細かく覚えていませんが、とにかく試験終了後はもう一つの意味で「終わった・・・」という感じでした(爆笑)。早稲田大学からリーガロイヤルホテルへ戻るのに、よせばいいのに友人達と答え合わせ(のようなもの)をしていると、「え、間違えたかも」というのがあったりして、なおさら気が落ち込んで・・・お通夜からの帰りみたいになってました(苦笑)。当時もしスマートフォンなどがあったら、よせばいいのに検索しまくってたでしょうね、きっと。
リーガロイヤルホテルの素敵なお部屋に戻り、浴室で何か憑(つ)きものを祓い(はらい)落とすかのように頭からシャワーを浴び、あんなに大量に持ち込んだ問題集や教科書類も開く気力も失せ、ベッドで大の字になって、リーガロイヤルホテルのこれまた素敵な天井の照明をぼんやり眺めつつ、「・・・やばいかも」と思っている間に、前日の睡眠不足と試験の疲れからか、いつの間にか眠ってしまっていました。
試験2日目は・・・一晩寝れば大体忘れる性格なので(笑)、そんなに落ち込んだ気分で試験を受けた記憶はないのですが・・・どうだろう、1日目よりは意外と出来たのかな、それとも記憶を完全に封印するぐらい出来が悪かったのかな(笑)、とにかくこれさえ終われば・・・という一心でひたすら試験問題に向かっていたと思います。
試験終了後は、いろいろな意味で「終わった・・・」という開放感もあり、合否はともかく、力が抜けて少し気分が楽になった記憶があります。
試験が終わったという報告は、最初に母親にした(させられた)と思います。案の定「どうだった?」と聞かれちゃったので、「・・・まぁまぁかな」と答えるのが精一杯でした。ここまで6年間好きなようにさせてもらっていながら、国家試験という、不合格になっちゃったらどうにもならない試験で「出来なかった」とは言えなかったですね(笑)
試験終了後翌日には、でもやっぱり一晩寝れば大体忘れる性格なので、結果発表までは国試の合否を気にするのも忘れ(たくて)・・・部活で最後の思い出にと、卒業ライブに向けてこれまでバンドを一緒にやったことのない後輩とバンドを組んで演奏の練習をしたり、友達と食事をしたりお酒を飲んだりお酒に飲まれたり・・・試験の合否のことなど振り切るかのように、6年間の多忙過ぎる学生生活最後の思い出にと毎日過ごしていたと思います。
合格発表は確か大学の卒業式の翌日で・・・獣医薬理学の研究室に集まって、合格発表を聞いた記憶があります。
発表まですごく気が重かったのを覚えています。
合格しているのを知ったときは、嬉しいというよりも安心したという方が大きかったですね。
その時の国家試験の、ウチの大学の合格率は100%・・・全員合格でした!これまたとても嬉しかったです。易しかったんだろーとか、言いっこなしで(笑)。
親も兄弟もみんなすごく喜んでくれました!
就職先にも合格したことを報告して、良かったねと言っていただいたりして。

良かったです。この職業について結構長いかも・・・になりますが、獣医師になれて、私はつくづく、つくづく良かったと思っています。
国家試験って、70%正解すれば合格だとすると、乱暴に言えば30%間違えられるわけで。
そんなことは頭ではわかっていても、いざ勉強しているときは毎日大変だったり辛かったり焦ったり緊張したりドキドキしたり落ち込んだり投げ出したくなったり・・・の繰り返しですよね。
でも改めて今思い出すのは、そんな忙しく大変だった日々と同じぐらいかそれ以上に、楽しい仲間に囲まれ優しい家族に見守られ、決して孤独ではない温かい日々でもあったなぁということ、です。
「少しぐらいなら・・・いや、けっこう間違えても何とかなる」・・・改めて考えると、こんな経験は、あの時が最後だったかもしれないです。社会人になると間違いや失敗は許されないですものね、とくにこの職業では。
今はこうやって、獣医師としてそこそこ長くお仕事させていただいて、小さいながら動物病院の院長なんて立場にいますが、私も学生の頃はこんなものです・・・今もか(笑)。
国家試験合格はゴールではなく新たなスタート・・・正直言って、獣医師として社会に出てからの方が、学生の頃よりもある意味何倍も勉強しているとは思います。でも国家試験に合格したくてあれだけ勉強した経験があったからこそ、今があるのだと思います。
獣医師のような、社会に出てからもたくさん勉強しなきゃならない仕事って、確かに大変かもしれないですが、とてもやりがいがあって、自分に合っていると思います。
かわいい動物たち、優しい飼主様、素敵なスタッフたち、温かい家族に囲まれ、私はおかげさまで毎日とてもとても楽しくお仕事しています。命が懸かった現場ですからもちろん大変な時もありますが、何だかんだ言ってやっぱり「あの時」と変わらぬ温かい日々を過ごさせていただいております。
受験生の皆さんは、今は勉強大変かもしれませんが、是非やり抜いて欲しいです!
必ず、明るい未来が待っています!